Thane Lundインタビュー

現在クラのレジデンス・プログラムで滞在制作を行っているThaneにインタビューを行いました。

毎回レジデンスで来られた方に聞いているのですが、どうして日本での制作を選んだのですか?

いろんな意味で日本に興味を持っていました。学生時代は陶芸、建築と絵画を始めました。陶芸では日本からインスピレーションと影響を受けて、日本の建築からは空間の考え方とシンプルさが勉強になりました。

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やっと日本にたどり着いたし、ここで見てきたものがこれからのプロジェクトに出てくるでしょう。日本は学生の頃のインスピレーションだったということだけではなくて、自然んも美しいです。米国にも自然と町がいっぱいありますが、その二つの融合があまり見られません。日本では自然と町はとても近く感じられました。そして、日本の考え方ではこういうところが大事にされいる気がします。

又、東京や京都がポピュラーだと思うのですが、
糸島にあるKuraで制作しようと思ったのはなぜですか?

農業が盛んな場所で育ちましたので、こういう環境に慣れる方が簡単かと思って二丈を選びました。ニューヨークのスタジオでは、新鮮なインスピレーションを受けることがなかなか難しいですが、Studio Kuraの周辺は毎日の探索を招きます。レジデンスの終わり寸前という今は展覧会に向けてスタジオで集中したいと思います。

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生まれたのはグレートプレーンズのノースダコタ州です。グレートプレーンズの樹は全部開拓者が植えたと言われています。いろんな争いが起きたせいで、不思議な歴史を持つ場所です。もう取り戻せない歴史や資料が多くあります。

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グレートプレーンズにはかつてバイソンがいっぱいいたそうですが、バイソンは狩られすぎて絶滅の寸前です。グレートプレーンズ自体は、飛行機からは方眼紙のように見えます。また、海からとても遠いです。Studio Kuraが海、森、山に近くて、暖かく迎えてくれるコミュニティーがあるところが好きです。

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ノースダコタはどの方向を向いても海から同じぐらい遠いです。北米には、こんなに海から遠い場所がほかにありません。大地の見た目が海に似ているときがあります。道路はまっすぐで、冬は何もかもが真っ白になります。白い空と白い地面の見分けがつきません。人口があまり集中していなく、学校は人の住まいからとても遠かったりします。自動車ができる前、田舎の子どもが馬車で通学していたらしいです。現在は田舎の小さい学校が大きな学校に固まって子どもが60キロまで遠くから通学しています。大きい方の学生はスクールバスや車で通学しています。

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これはモンタナ州のどこかの恐竜彫刻作品のとなりに並んでいる私の車です。

海から拾ってきたものがいっぱいですね。

その素材の存在感を超えるように組み立てるのが困難です。ほかの作品に影響を与えますが、どこかで拾ったゴミに見えない彫刻作品にするのが難しいです。成功したものはそれぞれの個性があって、味が出ていると思います。

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それぞれのブランドなどを失って、自然のものに見えてきています。ノースダコタ州には岩が積まれているところがいくつかありまして、そこに古いものが集まることがあります。海の波のせいじゃなくて、人の波のせいで(たまに風のせいで)そこに置かれていくのです。家電、骨、車のパーツなど、いろんなものが見つかります。たまにはプロジェクトに使える素材も見つかります。

Thaneさんの展覧会について伺ってもいいですか?

様々なメディアを使うことが多いです。内容とモティベーションは同じ点から来ますが、具体より考えを優先とするのが好きです。

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日本にくる前、大きな神社やお寺について情報をいっぱい見つけましたが、ここに来たら町や田舎のあちらこちらにある小さな神社やほこらの方に興味がわきました。そんな場所に様々な職人技が見られて、参拝する空間にインスピレーションを受けやすいと感じました。またその数が多くて、どこにいても近くに一つあって、景色に色を付けているところが好きです。

タイトルの”Not just us”はどの様にして決まりましたか?

違和感を感じるぐらい、私にとって少し不自然な英語訳の響きが好きです。詩みたいに聞こえることもあって、今ここに滞在してその気持ちです。「We are not alone」(我々人類はこの宇宙の中で唯一の存在ではない)のような宇宙人関係な英語の中に一度「not just us」という和製英語がありました。

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「Not just us」は社会と自然の関係と、世の中で人と国とそれぞれの隣人の関係など、人間の社会に関連性をつけやすい言葉だと思います。

展示される作品に使われる素材やメディアについて少し伺ってもいいですか?

絵画がいくつかあり、その他の作品もあります。学生としては抽象的な、ミニマリズムの画家の影響をたっぷり受けました。今回の作品には、紙を使うところと光の反射を利用することによって、軽さを求めています。大規模ではなくて空気のように軽い絵画を作ってみるという挑戦に興味があります。

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アトリエがあるニューヨークではどんな風に作業していますか?

今作りかけの絵画シリーズを保管しています。この旅行に向けて貯金するため、ここ数ヶ月アパートで作業してきました。ワークスペースの制約があって、新しい作業の仕方を考えないといけませんでした。アパートで作業するのは、基本的にスタジオで小さいものを作っているか現地インスタレーションんを作っていますので、そんなに困りませんでした。

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遠くの星の山を描く、というコンセプト絵画のプロジェクトで作業しています。天文学者はそれぞれの山の名前とデータを知っていますが、直接見た人がこの世にいません。また、もう存在しない地球の神話の名所にも興味あります。この二つのコントラストに興味を持っています。まだ見られないものと、もう二度と見られないもの。

糸島での作業はそれより反応的ですか?

ここにくる前は、現地の地図を見て、海と山が近くて、田んぼや畑が多いことに気がつきました。たった1ヶ月滞在していますが、作品に使えるような様々な場所を見に行ってきました。でもやはり数週間でしっかりした反応を持つのが難しいと思います。以前は何年も知った場所でよく作業してきました。芥屋の大門はくる前に地図で見て、実際見に行ったら彫刻作品のためになると思っていました。過去にも洞窟みたいな空間を使ったことがありましたが、これはまた違って、新しい反応を持つことが必要でした。

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アメリカでは、モンタナ州の廃棄された鉄道トンネルを花火で照らしたことがあります。日常的な素材を使って、無茶をしながら過去を覗き込む試みでした。糸島で作っている作品はもっと神秘的です、

Thaneさんの作品を見ていると、Tom Friedmanの影響を感じますが、いかがでしょうか?

確かに接点がありますね。アートにはどんな素材でも使えるという意識が一緒なのかもしれません。彼のインタビューを読んだことがありますが、面白いことが書いてありました。空っぽのスタジオに可能性を感じた素材を持ち込んで試していたらしいです。洗剤、発泡スチロール、あいた穴でも!

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アーティスト達が時間を通じてつながるのも面白いと思います。現在から過去をつなぐ系統みたいなもの。例えば、古代エジプトに心を奪われたことがあります。建築、儀式・・・昔からツタンカーメンに関する作品を作りたいと思っています。彼はエジプトの少年国王でしたので「Boy King」という香水を考えました。私が知っている米国の、彼と同い年の若者の中には、モテるために香水を使いすぎる人が多いです。現在社会の要素を使って、歴史的な人物の理解を深める方法にもなると思います。ツタンカーメンが今生きていたらどんなゲームをするのかな、と問いかけるようなことなのかも知れません。考えていることは、本当に臭い香水です。2000年後に空けてみたものみたいに。考古学的に性格な香りでしょう。

もう一つの進行中のプロジェクトは、狩った獲物の何もかもを使っていたという遠い昔の狩猟採集民にインスピレーションを受けて考えました。現在は人体の3Dスキャンをして、骨を3Dピリンターで再現することができます。自分の骨で作品や道具を作ってみたいと思います。例えば足の骨と肩の骨でスコップを作ってみたいです。

ここで始まったいくつかのプロジェクトで帰国後も発展させていけそうなものはありますか?

1ヶ月滞在して、素材や資料をとても処理できないほど大量に集めてきました。まだ処理していない映像や写真をいっぱい撮りました。ここは今まで住んできた場所とかなり違いますが、何となく懐かしい感じがします。特に、ここでの滞在は二丈の景色と建築の記憶を生み出しました。様々なインスピレーションを受けましたし、これからのプロジェクトにもきっと影響を与えるでしょう。

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フリーマーケットで見つけたカセットテープがたっぷり入っている箱は興味深いです。こういうものはどこに行っても集めたいものですので、こんなにいっぱい聴くことができて今でもわくわくしています。ミックステープや中身不明のテープはどこに行っても探すのが好きですので、この演歌やカラオケでいっぱいの箱を見つけて本当に嬉しかったです。人がテープに録音するものによって、その人の気持ちが少し分かって面白いと思います。誰かの人生の、ある場所とある時のポートレートを、音楽で作るようなものです。

でも見つけたものの中で一番大事なのは人との友情です。日本には是非また期待と思っています。私にとって日本はもう歴史と景色だけではなくて、人に会いたい気持ちも大事なことになりました。

先日、地元に帰ったらレジデンス プログラムを始めたいと伺いましたが・・・

10代と20代でよく考えていました。レジデンスとか展覧会ができる場所を運営できたらいいなと思っています。ノースダコタ州には、空いている広い建物はいっぱいあります。もう長いことそこに住んでいませんけど、家族に会いによく行きます。そういう場所がインスピレーションにぴったりという人がいると思います。

1914年に建てられた教会があります。10年前に閉鎖されて、面倒を見ている人たちは、もう使われないから燃やそうと思っていました。でもこの企画を話したら、建物を使っていいと言われました。

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ほかにも建物があります。例えば、米国の西部は鉄道に強い影響を受けています。鉄道が行くところに新しい町ができました。使われなくなった車両が農家に納屋にされることがあります。祖父祖母がアメリカで初めて住み着いたところの近くの丘の上に一つあります。狭い空間ですが、何もないところにある小屋で作業したい人がいるかもしれません。画家、作曲家、作家にいいかもしれません。

これができるために、学ばないといけないことがたくさんあると思います。クラの活動は様々なワークショップなども含め勉強になりましたよ!もっと色々聞きたいです!

毎年、マイクロ レジデンス ネットワークで集まって情報と経験を交換していますよ。

私もプログラムを始めたらそのネットワークに是非参加したいです!

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地元の可能性を知っていますから、そこでどうやったらこういうことができるか分かっています。ニューヨーク市はコミュニティーがすごいですが、安く使える場所を見つけるのが困難です。米国はアートが衰退しているところがあります。多くの学校にアートの授業がありません。ニューヨーク市の学校とアーティストとしての可能性がすごくいいと思います。ノースダコタ州は、現代美術館はセミトレーラーを動くギャラリーとして使っています。動く展覧会を行ったり、みんなの地元の施設でワークショップを行ったりしています。

今日は長時間のインタビュー、ありがとうございました!

まだすることと学ぶことがいっぱいあります・・・数年前ほかのレジデンスに行ったのですが、現地に慣れたと思ったらもう帰る時間ですね。でもとても爽快な経験でインスピレーションをいっぱいもらえます。私は、プロジェクトを持ってレジデンスに行くのより新しいことを試すのが好きです。

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